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「特製ひなまつり膳」紹介&料理長インタビュー

「特製ひなまつり膳」紹介&料理長インタビュー

REPORT レポート

日本料理は、季節料理。

2月20日「ひなまつりの室礼&車屋の行事食」イベントの特別献立「特製 ひなまつり膳」を、室礼講師の枝川寿子先生と事務局スタッフが一足早く取材・撮影、試食をさせていただきました。井坂雅次料理長のインタビューと共にお料理をご紹介します。


△ 昭和の森 車屋 井坂雅次 料理長

季節と年中行事を大切にする、日本料理の心。

――まずは前肴ですが、お料理はもちろん、器も桃の花も色鮮やかで、一目見ただけでひなまつり気分になりますね。

前肴は最初のお料理となりますので、おひな様の器を使ったり、桃の花をあしらったりして、味わいはもちろん、目でもひなまつりらしさをお楽しみいただけるようにしています。
蓬豆腐は蓬を胡麻豆腐にしたもので、蕗の薹味噌と一緒にお召し上がりください。蕗の薹味噌は、蕗の薹をベースに胡桃、車屋の合わせ味噌で仕立ててあります。上にのっている2種類の花びらは、赤ピーマンのゼリー寄せを型抜きし、さらに花びら型に細工した百合根を合わせて、重なり合う色合いをお楽しみいただければと思います。
おひな様の器の中は、小魚と野菜の南蛮漬です。柑橘酢のジュレをかけて爽やかな味わいにしてみました。


△ 前肴…蓬豆腐 蕗の薹味噌 花片見立 小魚野菜南蛮漬 柑橘酢ゼリー

――蓬豆腐は蕗の薹のほろ苦さ、蓬の香りにまさに「春が来た」という感じがしますね。南蛮漬との2皿でバリエーションの違う味、色、舌触りが楽しめます。

まさに春には「春が来た」と感じていただくことが大切で、私たち和食の料理人にとって季節感はとても重要なんです。日本料理というのは、季節料理なんですよ。その季節に旬を迎える食材がなければ始まりません。それが中華料理や洋食とは最も違うところです。
今の時季(取材・撮影時=1月中旬)はまだ生の蓬が出ていなくて、グリーンの色合いが本来とは違っていたり、桃の花も本物がどうしても手に入らなかったり……。春のお料理を作るには、今は手に入らない旬の食材が多くて、正直、この時季に撮影するということに苦労しました。

―― “日本料理は季節料理”……普段、日本人の私たちが当たり前に感じている季節感も、改めて言われてみれば文化的な財産ですね。季節の恵みに感謝する「室礼」にも通じるお話です。

今回は「車屋の行事食」と銘打っていただいていますが、ことさらに“行事食”と言わなくても、普段私たちが作っている車屋の料理は、器使いも含めたすべてが季節料理ですから、季節の年中行事とも深く関わっているんです。
例えば、お正月はやっぱりお正月らしいお料理や器使いをしますし、成人式が終わって1月20日前後になると、節分のお料理に変えていきます。器に桝を使ってみたり、豆や柊を使ったり。魔除けの鰯をイメージしたお寿司にしたり、干物にしたり……。節分の後はおひな様です。それが終わればお花見。そうしているうちに端午の節句がやってきます。すべての時季を「そういう季節ですよ」とお客様にわかっていただけるように、そしてその季節に旬を迎えるお野菜や魚の良さを引き出して、献立を作っていくのが日本料理なんです。

――日本料理の背景には年中行事が自然と入っているんですね。続いての椀物「蛤浅利ふかし」も、ひなまつりらしさを感じます。


△ 右…室礼講師 枝川寿子先生

「ふかし」というのは真薯(しんじょ)のことで、白身魚のすり身の中に蛤を刻んで入れ込み、蛤の形に仕立てました。真薯は和食の椀物でよく使われる椀種(わんだね)です。ひなまつりといえば皆さん“蛤のお吸い物”というイメージがあると思います。蛤そのままですと、お椀の漆塗りが蛤の殻で疵つきやすいこともありまして、真薯にして味わっていただくことがよくあります。
周りには葱を色紙切りにして花びらのように散らし、花吹雪をイメージしました。ふかしの下には、春の訪れを感じる新若布入りの卵豆腐が入っています。菱形に切り、菱餅をイメージしました。


△ 椀…蛤浅利ふかし 色紙葱 新若布豆腐 花片人参 木の芽

――真薯にすると食べやすいですし、口の中で真薯がふわっと崩れ、中から蛤が出てきた時の食感と味の違いが楽しいです。新若布豆腐と共に、食べごたえも出ますね。

 

ひなまつり限定の味わいと、遊び心の演出。

――次のお料理が運ばれてきました。おひな様の掛け紙が掛かっていて中が見えないので、何が出てくるかワクワクしますね。この掛け紙も素敵です。

魚やお肉、お野菜と少しずつ取り合わせた口取八寸になります。掛け紙を取ってお召し上がりください。


△ 口取八寸…魚白酒風味焼 花豆 酢取物 うすい豆すり流し 雛あられ
蛸柔らか煮 南瓜含ませ 色人参 菜の花ローストビーフ 香味ソース

――お料理がそれぞれ、菱形の器、ぼんぼりの器、蛤の器に入っていますね。ひなあられもあります。掛け紙のお内裏様とおひな様を合わせると、まるでお膳が雛壇みたいです。

そうですね。ぼんぼりや蛤の器が使えるのも、一年でひなまつりの時季だけです。
お料理をご紹介しましょう。まずお魚ですが、おひな様には白酒がつきものですから、お魚の焼き物には白酒を使っています。白酒をベースに百合根をつなぎに少し入れて、アコウ鯛に掛けて焼いた「白酒焼き」です。白酒焼きは、ひなまつりの料理ですのでご提供できる期間が短くて、普段の春の献立の中では実はあまり作りません。今回はひなまつりがテーマということで、イベント限定で作ってみました。さらに煮物代わりとして、女性の好きな南瓜とタコ、花豆を盛り付けました。

――白酒焼きは、まさにひなまつり限定のお味というわけですね。白酒が餡のようになっているので風味がとても濃く感じられます。

それからお肉料理は、ローストビーフで旬の菜の花を巻いてみました。菜の花も、ほろ苦い春ならではの味でローストビーフによく合います。
それから、ぼんぼりの器の中は「すり流し」です。隣にあるひなあられをのせてお召し上がりいただいてもいいですし、ひなあられはそのまま召し上がっていただいても結構ですよ。

――グリーンの色がかわいらしいです。ちょっと洋風の味わいがしますが「すり流し」とは何ですか。

「すり流し」というのは、野菜や魚介類などをすりつぶして、出汁でのばして味噌などで仕立てる和風のポタージュスープのようなものです。これはグリンピースのスープです。2~3月はグリンピースの新物が出回る時期なので、節分が終わると、私たちは豆ごはんなどに使ったりするんですよ。
普通は、すり流しにはクルトンをのせるのですが、おひな様ということでクルトンの代わりにひなあられを添えてみました。すり流しにのせて召し上がっていただいても、そのまま召し上がってもいいという、まあ、遊び心ですね。

――クルトンの代わりにひなあられ……!これは素敵なアイデア。真似してみたくなります。

ひなまつりなので、ひなあられはぜひ使いたいと思っていました。ただ、今の時季(1月中旬)は、ひなあられがないんです。お菓子の問屋さんに問い合わせても「バレンタインが終わらないと、ひなあられは出ないよ」と言われてしまって……。さんざん探して、特別なルートで何とか2袋、手に入れました(笑)。取り寄せるのに本当に苦労しましたよ。

――旬の食材だけでなく、年中行事にまつわるものは、その季節にならないと揃わないのですね……ご苦労をおかけしました。

 

春の醍醐味“山菜”のちらし寿司と、人気のデザート。


△ 食事 止椀…野菜ちらし寿司

――ちらし寿司は、野菜に花びらのような細工もしてあって、一品一品が美しいです。

今回は、気軽にひなまつりをお楽しみいただくコースですので、魚介などは使わずに野菜のちらし寿司にしています。春に旬を迎える筍やコゴミ、さやえんどうと、花びらに切った人参、百合根、生姜、木干し椎茸(どんこ椎茸)、錦糸卵、トビコを飾り、中には蓮根のきんぴらや干ぴょう、椎茸などを酢飯に混ぜています。

――春の野原みたいですね。目で見て、味で、香りで……日本料理は旬の恵みを五感でいただくものなのだと改めて感じました。

最後はデザートになります。デザートは黒胡麻のプリンです。氷砂糖をかけてバーナーで炙ればブリュレになるものを、ブリュレにしないで黒胡麻のソースをかけてプリンにしてあります。車屋の中でも特に女性に人気のあるデザートなので、定番でお出ししています。


△甘味…黒胡麻ぷり

――おいしいです。デザートはパティシエさんが作られるのですか。

いえいえ、僕たち和食の職人がすべて作るんですよ。

――そうなんですか! 和食だけではなく、こういうお料理をどう学ぶのですか。

いろいろ食べて研究したり、洋食や中華の職人さんとのお付き合いの中でヒントをもらったりしてね。それを車屋のお料理としてアレンジしていくんです。

――なるほど。和食以外も学んで取り入れて、献立を組み立てていくのですね。

季節料理としての日本料理を楽しむきっかけに。

――今日は最初から最後まで、ひなまつりと、春が来た喜びを感じるようなお料理でした。今回のイベント以外でもこの「ひなまつり膳」をいただくことはできるのでしょうか。

イベント限定で作る献立ですので、残念ながらまったく同じメニューとしてすべてをお召し上がりいただくわけにはいきませんが、先ほどもお話したとおり、一つひとつのお料理は、春の献立の中の季節料理として登場します。
例えばお椀は、3月中ですと今回のものとほぼ同じようなものをお召し上がりいただけますし、前肴の蓬豆腐なども、今回とは違う形ですが献立の中でお出ししたりする予定です。ですので、春にお店に足をお運びいただければ、季節のお料理として同じように召し上がっていただけると思います。
私たちの献立は、大きな流れとしては2ヶ月単位で季節が変わっていきます。今回のイベントをきっかけにして、それぞれの季節料理としての日本料理を楽しむきっかけにしていただけたら嬉しいですね。

――ありがとうございました。

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